>>を見上げて交わした誓い<<

□第1話


■自室


圭介「ふぅ・・・しかしいきなりだったな・・・」

話の内容はまったく予想だにしないものだった。
小学校の頃から医者を目指すために一流の、いわゆるおぼっちゃま小学校ともいえるところに通い、中学も入試のある一流の学校に入った。

圭介「・・・じんちゃんが死んだのもなにかあるのかな」

そう、ちょうど一年前の今頃に可愛がってくれていた祖父が死んでしまった。病気とかそういうのじゃなくて80歳だったので天寿を全うしたとのことだ。

じいちゃんはさっき話に出てた故郷の島「隠岐見蔵島(オキミクラトウ)」に住んでいた人だ。
俺自身も小さい頃住んでいた覚えがあるし今までも何度か遊びに行った覚えもある。行くたびに快く出迎えてくれて祖母とともに可愛がってものだ。

圭介「・・・そんなわけないか。これは父さんの考えが変わっただけかもしれないしもっと他になにか理由があるのかもしれないし」


・・・正直二つ返事で「あぁ、ちょうど医者の夢を諦めて他の夢を目指す」とあの場で言いたかった。

圭介「っといってもなぁ・・・今更新しい夢なんて・・・」

決心がつかない。なにがないって諦めて島に行く明確な理由がないからだ。

圭介「・・・そういえばばあちゃんはじいちゃんが死んじゃったから寂しいんじゃないかな」

元々は家族5人で暮らしていたところに俺たち家族3人がいなくなってさらにはじいちゃんまでいなくなっては寂しいだろう。

圭介「それに幼なじみのみんなにも会いたいな」

なんとなく自分の中で決心が固まってきた。
即席の理由だが動機には十分だ。それに新しい環境になればなにかやりたいことが見つかるかもしれない。

圭介「・・・俺って単純っていうか年の割に老けてるなぁ・・・しゃぁないか。あんな学校いってちゃ喋り方とか考え方まで大人びちゃうし」

ものの十数分で答えは出てしまった。そうと決まれば両親に話すか。





・・・その後、すぐにリビングに行き結論を話した。

両親はそれに対してすぐに転校の手続きをとったり向こうの家に電話して連絡したりした。



そして・・・



■[03/22 午前10時]
┗玄関


圭介「じゃあ、行ってくるね」

健二「おう、気をつけてな」

恵子「なにかあったらすぐに電話するのよ??」

圭介「うん、わかってる。そんな心配しなくても大丈夫だよ」


両親は仕事の都合上圭介と一緒にいくわけにはいかないので俺だけ行くことになった。
まぁ父は医者だし院長だしそうなるとは予想はしていた。

圭介「また夏休みか遅くても正月ごろには一度顔を出すよ。・・・じゃあ行ってきます」

恵子「いってらっしゃい♪体に気をつけてね」

二人とも笑顔で送り出してくれた。
少し寂しい気もするけどせっかく笑顔で送り出してくれたんだからこっちも笑顔で出て行く。


圭介「さぁ・・・どうなんのかな俺」

それは私にもわかりませんね♪




健二「なぁ、恵子」

恵子「ん?なぁに??」

健二「・・・俺らの出番もうこれで終わり??」


恵子「・・・そうかも・・・ね」


さりげなく落ち込む二人であった。





そして、時は経ち場面は変わり!
■[3月21日 午後1時]
┗隠岐見蔵島 自宅(になる予定)前


圭介「ここが俺の新しい家・・・か」

見上げ・・・ようとしたがすぐに視界から家は途切れる。なぜかというと

圭介「一階建ての一軒家は久しぶりに見た気がするな」

昔ながらの家を見て懐かしがってると祖母が出てきた。

紀代「・・・ケイ、ケイなのかい??」

圭介「おぉ、ばあちゃん。お久しぶりです。帰ってまいりました」

紀代「ささ、そんなとこ立ってないで家にお入り。疲れたじゃろ」

ばあちゃんが家に入っていったのでそれに着いていく。

圭介「・・・変わってないな。全然ばあちゃんも元気だしよかったよ」



■隠岐見蔵島 風見家 客間

圭介「そんな、わざわざ客間になんか招かなくてもいいのに」

紀代「いんや、立派なお客様じゃないかい。しっかりお招きしないとね」

っといいつつお茶を入れてくれる。

紀代「熱い方がええか?冷たい方がええかえ?」

圭介「歩いてきて熱いし冷たい方で」

そういうと冷蔵庫から氷をコロンコロンといれて麦茶を入れてくれた。

早速ゴクゴクと飲み一息つく。

圭介「ふぅ・・・生き返るよ。ありがとう」

紀代「この麦茶懐かしいじゃろ??小さい頃はよく飲ましてやったもんじゃ・・・」

圭介「そういえばそうだった気もするな。なんだか味が懐かしい感じもしたし」

などというなんてことない懐かしむ会話もなんだか少し楽しくなってくる。
周りは自然ばっかりだし都会とは空気が違うしそれだけで十分リラックスできる。

・・・これが噂のマイナスイオン?(やっぱり単純


その後もちょっと見ないうちに大きくなったなという定番の下りも入って今までどういう暮らしをしていたのかとか両親は元気かとかそういう話をした。

っと、ひとしきり話したところでばあちゃんが

紀代「そうそう、ケイが寝泊りするところだけどね。すぐそこに離れがあるんだけど、一応そこに住んでもらうことにするよ」

圭介「うん、ありがとう。早速見に行ってみるよ」


荷物も自分の部屋に置きたかったので言葉どおりすぐに離れに向かった。



・・・離れは本当に離れていて敷地内なのに軽く200mはあった。恐るべし田舎。



■隠岐見蔵島 自室(になったところ)

圭介「んしょっと・・・ここが俺が今日から住む家か」

部屋はきれいに掃除されていて・・・広い。いや、ここは「なかなか」とか「そこそこ」とかの表現と一緒に使いたいところだけど本当に広い。何畳あるんだ・・・?

圭介「家具もないし余計かな」

床は畳でこういう家特有の木のにおいもして自分的にはいい印象だ。風通しもいいし日当たりも良好だ。


圭介「とりあえず荷物は向こうからも送られてくると思うし片付けは追々だな」

とりあえず荷物を置くだけ置いてまた向こうに戻る。・・・っとっと。そういえばお土産にお菓子持ってきたんだったな。

カバンからお菓子を出して向こうに戻る。


■隠岐見蔵島 風見家

戻ってすぐにばあちゃんにお土産を渡した。そのお菓子はばあちゃんの大好物だったようですごく喜ばれた。さすが母さん・・・好みまで知ってるとは。


そしてばあちゃんから4月から通う中学を見てきたらと言われたのでそうすることにした。ひとしきり話したしなにもすることはなかったから丁度いい暇つぶしになりそうだ。周囲のことも覚えてるようで覚えてないのでちょっとした冒険気分でテンションも上がってきた。

圭介「・・・うん、やっぱ俺まだまだ子供だな」


なんとなく安心する圭介であった。


□ 次のページ